Loading...

アベル・アーセス


Voice:にーさん


旧暦(高度文明期)

享年:29歳
属性:地属性
出身:東地(アルデバラン/巨神の戦跡地)

新暦(人類滅亡後)

KEEPER=LEO/獅子座の守護者
役割:C-GE:強襲型戦闘機巧


混沌の末裔 / 冥脈届かぬ砂跡の剣聖

彼の現在のコードネームはKEEPER=LEO。
『獅子座』の名をその身に冠する近接戦闘型アンドロイドで、異なる二剣を愛用している。
これは人形社会において未だ謎多き『創造主の時代』の遺物だそうで、機巧人形たちには少々手に余る代物のようだが、目を覚ました彼はなぜだか傍に置かれていたこの二剣に惹かれ、他の者では握ることすら難しかったこれを即座に使いこなすことに成功した、という。
以降、この武の才を活かして、彼は日々魔素を喰らう謎の敵生命体を排除し続けてきたわけだが、血の気が多く、特段何も仕事をしない『乙女座』を毛嫌いしている。彼女に『ロールレス』などという蔑称を付けたのも彼で、かの躯体を重要視するSIR=GEMINIがいつも手を焼かされている次第である。

そんな彼のオリジナルの魂の名は、アベル・アーセス。
さあ、今日は、剣聖と謳われる彼の人類滅亡までの軌跡を読み解いてみようではないか。


キャラクターボイス


『俺、もしかして、出番・・・?』



『なぜSIR=GEMINIはあの役立たずを停止させないのですか?!
アストラルフレアを喰うだけの無駄な存在じゃないか!』


   

STORY

◀ 初めから読む

◀ 『レヴィア・リインの軌跡』

▼『アベル・アーセスの軌跡』

セントラルの東に位置する広大な砂漠一帯を支配する部族の生まれ。
この部族は、信奉する神が四大交差(セントラル)へのエデンの入植を嫌った『大地創世を司る地の女神』であることに加え、冥脈(アストラルフレアの通る地下水脈)が地上に露出する場所も限られており、主に最東部の森側に集中していることから、太古の昔よりアストラルフレア(魔法)にはあまり頼らず、物理戦闘術を磨いてきた背景を持つ。
=魔法が苦手な者が多い。

もちろん、アベルも例に漏れなかった。
彼は終戦(セントラルの英雄誕生)時、まだ幼い少年だった。(当時3歳)
終戦前と終戦後で東国アルデバランでの生活の様相は一変したという。
“篝火”の力が人の世に露見した結果、世界には平和が訪れ、主要5カ国の交流が急速に盛んになり始めた流れの中で、東地にも利便性の高い魔導技術が浸透し、原始的な生活しか知らなかった幼いアベルは次第に“救国の魔導師”アダム・ブレイズの数々の逸話に憧れるようになっていく。
“砂漠の民”の大半がセントラルを認めた背景には常にアダムの存在があったからだ。
彼は人の心を制する“篝火”という名の神力を持ちながらも、決して、敗戦地域の統治支配をしようとしなかった。あくまで独立を認め、必要な支援をする。誰も殺さない。
南地に蔓延していた『奴隷』制度を廃したのも彼の功績で、彼の地からの誘拐、人身売買の被害を受け続けていた東地砂漠地帯の環境は、一気に“文化的”なものへと変わっていったのだ。
強大な神力を「抑止力」に留めて、“セントラルの蛇”を初めとする旧セントラルの「従わぬ者には死を」といった他国排他的姿勢を緩和し、『世界平和』を実現した彼の気高き精神に共感する者は多く、アベルもまた、その中の一人として成長していくこととなる。

▼アベルEP5-1 (2075年):幼き日に見た英雄

(以降、視点アベル)

東国アルデバランがセントラルに敗北して暫く、俺がまだ小さかった頃、“彼”を一度だけ見たことがある。アダム・ブレイズ。セントラルの英雄だ。

その日村の大人達は皆、朝から緊張に包まれていた。
「セントラルの蛇が来る」と、母さんが俺を抱きしめながら震えていたのをすごく覚えている。
幼いながらに「あぁ、きっと僕達は奴隷にされるんだな」と覚悟を決めた。

彼女が到着した時、大人達は皆、片膝をついて頭を垂れていた。

俺たちにとっては“降伏”の証だ。俺の親父は剣の達人で、片膝をつかれているのは見たことがあっても、親父がそうしているのを見たことは今まで一度もなかったから、彼を初めとした、俺にとっては最強の戦士達が、華やかな笑顔を湛えて漆黒の長髪を揺らす“小柄な少女”に向かって揃いも揃って最敬礼を示すその姿は、正直衝撃だった。

族長「ようこそおいでくださいました・・・ヌル将軍閣下・・・。」

ヌル「出迎えご苦労。・・・おや?
そこにいるのは、アーセス君じゃないか・・・っ!
執拗に私の首を狙ってきた“気高き戦士”が、
まさかこの“蛇”に頭を垂れる日が来ようとはねぇ。
なかなかにいい気分だ。」

アーセス(アベル父)「・・・何とでも言え。俺の首ひとつで村が助かるならいくらでもくれてやる。」

ヌル「・・・泣けるねぇ。君のそういう偽善的なとこ、ほんと嫌いだなぁ?」

一色触発・・・と言う以外にどう言い表せというのだろうか。
自らを“蛇”と呼んだその小柄な少女に到着直後の明るい面影はなく、異様ともいえる鋭い眼光がその場を一瞬で支配する。まるで“神”にでも睨まれたかのように、村のみんなが震え始めて、重苦しい沈黙が流れていた。もちろん、俺も例に漏れず、びびっていた。
眼光だけでここまで人を威圧できるものか、と・・・。

『(これから、俺はどうなってしまうんだろう・・・)』
と、思わず母の手を握りしめたその時、“彼”は遅れて現れた。

アダム「ヌル!いい加減にしてくれ・・・。貴女はどうしていつも事をややこしくするんだ・・・。」

ヌル「えぇ?だって、面白いじゃないか?
アーセス君とは戦場を駆けた仲間なんだからちょっとくらい、いいだろう?
ほら、感動の再会、というやつだよ。」

アダム「そんなんだからどこへ行っても嫌われるんですよ・・・。
フォローする僕の身にもなってください・・・。」

ヌル「ひっどいなぁ。こんなに可愛いのに。」

アダム「うるさい。もう、ちょっと黙ってて。」

村のみんなが呆気にとられた。「あの蛇になんて口を・・・」といった空気だ。
翠の目の美しい、物腰柔らかなその少年は、不服そうに口を尖らせる少女に向かって一際大きな溜息をついた後、俺の親父の前までゆっくりと歩いて止まり、そして、同じように片膝をついて彼に目線を合わせる。
再度どよめきが起こった。当たり前だ。
「セントラルの人間が、何故、敗者に向かって最敬礼を・・・」誰もがそう思った。

アダム「私は“アダム・ブレイズ”といいます。お会いできて光栄です。ミスター・アーセス。」

アーセス「君が・・・。
あの、戦況を一瞬でひっくり返したという“不殺の幻術使い”だというのか・・・?」

アダム「はい。そうです。」

アーセス「まだ子供ではないか・・・。てっきり私は“老骨”の賢者を想像していたのだが・・・」

アダム「あはは・・・よく言われます。」

ヌル「実際、そいつは爺くさいぞ。そこのおまえらの族長くらいにはな。」

急に蛇から話を振られた村の長が固まる。

アダム「もう・・・っ!黙っててって言ったでしょ!?」

ヌル「おー、怖い怖い。」

アーセス「ヌル・・・おまえ、こんな年端も行かぬ子供を戦線へ投入するとは・・・
見損なったぞ・・・。」

ヌル「えぇ・・・? 何を言ってるんだ、君は。そいつは私以上の“化け物”だぞ?」

アーセス「そんなわけがあるか・・・!
だいたいおまえはいつもそうやって前線の兵士達を盾にして・・・!
やはりおまえと和平を結ぶなど、あり得ない・・・!
今日こそその首掻き切ってやる!表に出ろ・・・!!」

ヌル「ほう? 無謀にもこの蛇との一騎打ちを望むか。
その心意気やよし。いいぞ、受けて立と・・・」

アダム「あーーーー!!もう二人ともストップ・・・!!段取りがめちゃくちゃだよ・・・。」

頭に血がのぼった様子で剣を抜いた臨戦態勢の親父と、それに向かって不敵な笑みを浮かべて魔導具と思われる“煙管”を構える“セントラルの蛇”の間に飛び入った美しい翠眼の少年の“禁術”を、俺は多分一生忘れることはできないだろう。
彼の周りを囲むように猛炎は走り、その炎から立ちのぼる彼の瞳と同じ色をした幻想的な翠煙が一帯に広がるや否や、親父は戦意を喪失し、剣を鞘に収めて茫然とその場に立ち尽くした。
一方、セントラルの蛇はというと、その翠の煙を回避するかのように器用にうしろに下がって、猛炎をまとって彼女を睨みつける少年の方へ、両手をあげながら苦笑いを浮かべている。

ヌル「私にまでその術を行使してくれるな、アダム・・・。一応、これでも上官ぞ・・・。」

アダム「知ったことか。これ以上やるというなら僕が代わりに受けて立ちますよ。」

あろうことか、親父ではなく、彼の“上官”へ宣戦布告した翠眼の少年に、普段何事にも動じないあの親父が唖然とさせられていた姿を、俺は一生忘れない。

▼アベルEP5-2 (2085年):『セントラル軍入隊』

時は流れて数年後―。

俺は腐っていた。
小さい頃に見たセントラルの英雄、アダム少年に憧れ、追いかけて、ようやくセントラル軍へ入隊することができたものの、魔法適性が低い東の砂漠の民の扱いはお世辞にもいい物とは言えなかった。
そもそもの話、いくら東地とセントラルが和平を結んだ後とはいえ、信じる神々の違いの関係上、未だにあまりセントラルに従軍したがる者はいないわけで、(アダムさんはそれすら認めてくれているわけだが、)入隊申請ですら手こずった有様だ。
そんな俺と仲良くしたがる者が居るはずもなく、ようやくできた友人といえば、この、今目の前でのんきに昼飯のパンを頬張っているオッドくらいのものだ。

アベル(13)「しかもさぁ・・・!!」

オッド「・・・?」

突如、まるで酔っ払いのような仕草で机に突っ伏した俺を不思議そうに眺める友人に愚痴を吐くこの姿といったら、情けないこと限り無い。

アベル「アダムさん、3年前に北地に引っ越しちゃって、
今はあっちで落ち着いてるらしいんだよぉぉぉ・・・。
そりゃさぁ・・・? いろいろ大変だったと思うよ・・・?!
数々の武勇伝をずっと追ってきた俺が言うんだから間違いないんだけどさ!?
でもさぁ、まだ隠居するには早いだろぉぉぉぉ。」

オッド「あぁ、ニュースになってたね。お子さんできたって。女の子らしいよ?」

アベル「何だよそれぇぇぇ・・・。俺の知ってるアダムさんはこう、もっとさぁ・・・!」

オッド「はいはい、もう耳にたこができるくらい聞いたよ。
輝かしい猛炎をまとって、一瞬で君のお父さんの戦意を喪失させて、
その後、毅然とした態度であのヌル将軍に宣戦布告したんだったよね。」

アベル「神秘の翠煙のくだりを忘れてる。やり直し。」

オッド「わーかったって。ごめんって。」

アベル「あーぁ。こんなことなら、俺も北地で神官目指せばよかった・・・。」

オッド「・・・それこそ無理でしょ。魔法適性ほぼないんだから。」

アベル「言うなよぉぉぉ。そうだよ、どうせ俺は剣しかできねぇよぉぉぉ・・・。」

オッド「僕の魔力、半分くらい分けてあげられたらいいんだけどねぇ。」

アベル「ほんとそれな。おかげで俺ら、セントラルでもこんな扱いだし。
あー、もう俺、田舎帰ろうかな・・・。アダムさんの部下になるのが夢だったのに。
北地移住許可出したのあの蛇らしいんだけどさ・・・。一生恨むぜ、ヌル将軍。」

ヌル「私がなんだって、少年?」

アベル「・・・うわぁ!?」

オッド「・・・!?」

こうして申し訳ないことに、別の意味で変わり者として敬遠されていた二属性持ちの友人まで
巻き込んで、俺はこの後蛇の部隊へと配属になるわけだけど、
終ぞ英雄アダムに会う機会は得られず、気がつけばセントラル軍での地位も確立して、
最初こそ怯えっぱなしだった蛇の扱いにも慣れながら、
それなりに楽しい青年時代を送ったんだ。そう、あの日までは ― 。

『オッド・メドロアの軌跡』 ▶

年表を見る ▶

※ストーリーはキャラクター順に繋がっています。