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エルデ・シン


Voice:ちいま☆


旧暦(高度文明期)

享年:48歳
属性:地属性
出身:東地(アルデバラン/最果ての深森)

新暦(人類滅亡後)

KEEPER=SAGITTARIUS/射手座の守護者
役割:C-GE:隠密型戦闘機巧


混沌の末裔 / 冥脈護りし鎮守の刺客

彼女の現在のコードネームはKEEPER=SAGITTARIUS。
『射手座』の名をその身に冠する遠距離戦闘型アンドロイドで、大型の狙撃銃を愛用している。
こちらもLeoと同様に、人形社会において未だ謎多き『創造主の時代』の遺物のひとつで、彼女以外には扱えない代物だ。お互いの弱点をカバーしあえるLEOと彼女は、この機巧の社会において“最強のコンビ”と言って差し支えないだろう。
また、彼女に関しても、何の役割も果たさぬ“ロールレス”に決していい感情は持っていないようだが、幾度となくSIR=GEMINIに「ロールレスの稼働停止」を促すLEOを窘めたり、いざとなればロールレスと普通に接する大人な一面も持ち合わせている。
どうやらSABIKから何かしらの情報を得ているようだ。また、SIRへの忠誠心がかなり厚い。

そんな彼女のオリジナルの魂の名は、エルデ・シン。
余計なコトは決して話さない。今日は、“生粋の暗殺者”として、日々『謎多き敵生命体』を淡々と排除し続ける寡黙な狙撃手の、哀しき人生の軌跡をここに紹介しよう。


キャラクターボイス


『さぁて、仕事しますか!』



『これだから魔導師は嫌いなのよ。油断ならないわほんと。
どういう絡繰りよ。おかげで無駄に弾食ったじゃない。』


   

STORY

◀ 初めから読む

◀ 『オッド・メドロアの軌跡』

▼『エルデ・シンの軌跡』

東の最果ての険しい山脈の頂きには、太古より『始の女神の混沌』と呼ばれる『大冥脈』を守護する“深森の民”が暮らしている。彼らの暮らしは高度文明期に突入した現代においても未だに謎めいており、英雄アダムの力を以てしても対話は叶わぬままとなっている。

― 何人たりとも、この聖なる深森しんじんに立ち入るべからず ―

砂漠側の好戦的な民たちとは違い、俗世との関わりそれ自体を拒み続けているのがこの部族の特徴だ。“砂漠の民”とは戦前まで友好関係にあったようだが、セントラル(アダム)による世界平定以降は、彼らですら“深森の民”との接触を図るのは難しくなってきている、という。
また、神々の僕である召喚獣との契約を得意とする西方の“風の民”に関しても、地の女神との契約を果たした者は一人も居ないというのだから、四大交差へ土足で踏み入るセントラルの民、そしてそれとの交流をよしとする数多の他民族を、かの女神がいかにまとめて嫌悪しているかといった背景は容易に窺い知れるというものである。
かくして、若き日のアダムが降した“最果ての深森”への裁定は「あちらはこちらに興味がないのだから、無理に交流しなくてもいいでしょう?」という、“篝火”を制した英雄としては何とも欲のないものであったのだが、深森の美酒の量産を望む“セントラルの蛇”を納得させるのにはかなりの時間を要した、とか。

▼エルデEP6-1 (2066年):『深き森の民』

深森しんじんの掟、即ち、同胞以外に姿を見せること為らず。

あたしの一族は、太古の昔よりこの大地を創りし『地の女神』を守護してきた。言い伝えによると、かの女神は他神、特に四大交差に今も尚、居座るとされる「エデン」と呼ばれる異物を嫌悪してやまないそうだ。神話の時代から1000年以上が経過したとされる現代においても、かの女神の守護者たるこの森の民の方針は変わらず、相も変わらず下界からの侵入者を排除し続けている。

南地の奴隷商人「な・・・なぁ・・・? 居るんだろ? 姿を見せてくれないか・・・?」

エルデ(13歳)「最後の警告だ。立ち去れ。この矢に射貫かれたくなければ、今すぐに。」

南地の奴隷商人「ひっ・・・」

あたしは今日も地上からは死角となる高い木の上から、威嚇の矢を射かける。
最近はじゃらじゃらと奇っ怪な光り物を身につけた南側からの侵入者が後を絶たない。
主神を同じくする砂漠の民伝の情報によれば、“南地”に蔓延る“豪族”とやらは相当に欲深き者、らしく、“人攫い”や“密猟者”に気をつけろ、ということらしいのだが・・・。

エルデ「そもそも、こちらの姿さえ捉えられない阿呆の集まりじゃないか。馬鹿らしい。」

砂漠側が大変なのは、まぁ、理解できる。なんたってあちらは視界良好だ。
だが、この深森の地の利は我らにある。

エルデ「はぁ・・・。今日もつまんない仕事。ほんと。」

どうせ今地上を這い回っている下界の一団も、あとひとつ矢を放てば、蜘蛛の子を散らすように退散していくだろう。あたしはそう思っていた。

エルデ「さぁて、仕事しますか!」

せいぜい威嚇してやる、と再び矢を構えたその時、異変は起こった。

カイン(アダムの兄)「アダム。やれ。」

アダム(6歳)「・・・・・・はい、兄上。」

一団の中にいた、死んだ魚のような目をした小さな少年に尊大な口調で命令する青年の短い一言を合図に、辺り一帯が炎に包まれる。

エルデ「・・・げっ。あのおちびちゃん、魔導師か。」

侵入者の大半は森の恵みを奪おうとやってくるわけなのだが、どういうわけかたまに居るのだ。
後先考えずに森の中で火を炊く阿呆が。
望む物すら燃え尽きる大惨事を想像できないんだろうか。

エルデ「残念だけど、おちびちゃん・・・、地の女神さまはおっかないのよ?」

ならず者は殺すに限る。相手が子供だということに多少心は痛んだが、先に仕掛けてきたのはあちらさまだ。こういう時は仕方ない。全ては森の静寂を守る為だ。

地の魔法で彼らの足場を崩し、一団全ての人間の体勢を崩したエルデは、彼の心臓に瞬時に狙いを定めて、射貫き殺す・・・はずだった。
だが、その矢は再びあがった猛炎によって見事に防がれ、そして、光の灯らぬ翠の目をした少年の視線は、次の瞬間には正確にこちらを捉えていた。

アダム(6歳)「・・・いたよ、兄上。」

エルデ「(・・・は?軌道を読まれた!?)」

あたしは彼が無詠唱でこちらへ放った火の玉に驚き、足を滑らし地上へと叩き落とされて、そして、意識を失った。

▼エルデEP6-2 (2067年~):『南国フォーマルハウト奴隷時代:ブレイズ家譚』

あれからというもの、私の生活は地獄だった。
南地の豪族、ブレイズ家が欲していたのは世にも珍しい“森の民”、そのものだった。
まんまと捕まったあたしは、カイン・ブレイズに飼われることとなり、“首輪”をかけられる。
奇っ怪な首元の魔導宝飾からは反抗するたびに苦痛が走り、徐々にあたしは彼のもとから逃れることを諦めていった。

その後は、「銃」の技術を叩き込まれた。弓の数十倍の威力を持つ、鉄の塊だ。
あたしは命じられるがままに“人”を殺すようになって、1年も経たずに、立派な“暗殺者”が完成した。

アダム(7歳)「ご飯だよ。エル。」

奴隷に与えるには少々豪勢すぎる食事を二人分用意して、わざわざ毎回私の質素な部屋まで運んでくれるこの無表情な少年、名は「アダム」というらしい。
捕らわれた当時、奴隷用の質素なパンをかじって泣いていたあたしに、暖かいスープをこっそり持ってきてくれたのはもう1年前になるだろうか。
銃で暗殺家業がこなせるようになってからというもの、あたしの待遇は多少改善されている。
要は、反抗的な奴隷からブレイズ家の忠犬に昇格したわけだ。なもんで、命令されれば暗殺はもちろん、荷物運びでも何でもやる気でいるのだが、彼は一度もあたしに細かい雑用を言いつけたことはないどころか、こうやって甲斐甲斐しく身の回りの世話を焼き続けてくれている。

どうにも気弱で立場の弱そうなこの少年、察するにこの家の次男坊らしく、兄弟だというのに年の離れたあのくそほどに偉そうな兄・カインからはだいぶ疎まれ、何かにつけて小間使いにされているようだった。「母親でも違うのか・・・?」という予想が働くほどには容姿も性格も、何もかもが似ていない。家族間の詳しい事情はさっぱりわからないが、まぁ、このブレイズ家とやらの家族仲が最悪なのは1年も見ていれば誰の目にも周知の事実というやつだ。
少年といえば、今日も相変わらず、目が死んでいる。
元はと言えばこいつのせいでひどい目に遭ったわけだが、あの時油断して情けない形で負けたのは事実だ。もはや同じく被害者感の漂う彼を責める道理もない。

それにこうして、彼だけが最初からずっと、あたしを“人”として扱ってくれた経緯もある。
カインにはそれはもう幾度となく首輪の力を行使されたわけだが、同じくその権限を持っているであろうこの子は、それをあたしに一度も使わなかった。
なんなら一度、「このチビだけなら・・・!」と脱出を図ったこともあるが、森で捕まった時と同じように、ただただ無表情に、制御の行き届いた炎で行く手を阻まれた後で、
「兄上に見つかったらまた苦しい目に遭うから、戻って」と静かにたしなめられただけだった。

エルデ(14歳)「・・・あんたさ、何であいつの言いなりなの?」

アダム「・・・え?」

エルデ「十分強いじゃん。あたしなんか、ほんとはこの首輪で脅す必要すらないんでしょ?」

アダム「いや・・・うん、まぁ・・・。」

エルデ「はー、余裕すぎて腹立つな。ちったぁ否定しろっての。」

アダム「・・・ごめん。」

エルデ「まぁ、別にいいけどさ。なんか、あたしよりあんたの方が“奴隷”みたい。」

アダム「・・・そう、かもしれないね。僕は、父の愛人の子だから。実質奴隷と変わらないよ。」

エルデ「へー!やっぱそうなんだ。全然似てないもんね。あのクソ兄貴と君。
で、その愛人の母親とやらはどうしてるわけ?
君がここに居るってことは、あのババアも君の出自は知ってるわけでしょ?」

あたしは、カインとよく似たヒステリックなご夫人以外の女性をこの屋敷の中で見たことはない。だから単純に気になって、「教えてくれなければまぁそれはそれでいいや」程度に話を続けてみた。夜中の暇つぶしにはちょうどいい。

アダム「・・・母上は、亡くなったよ。毒殺だった。」

エルデ「へ、へぇー・・・。君が自分でご飯用意するのはそういうこと、かぁ・・・。」

アダム「うん。もう、信じられるのは自分だけだから。」

淡々とハードなことを話す子だ、と思った。

エルデ「・・・・・・。」

思っていたよりも重めな回答になんて切り返していいかわからず、思わず沈黙してしまったあたしに気付いて、彼は無表情だったその顔を少しだけ自嘲気味な微笑みに変えて、話を切り替える。

アダム「ほら、これ、エルの分。冷めちゃうから、早く食べるといい。
じゃあ、僕は戻るね。」

エルデ「・・・・・・それ置いて、座って。」

アダム「??」

少年は少し驚いて、不思議そうな顔をしている。

エルデ「いいから、さっさとご飯置いて座んなさいよ。冷めちゃうでしょ!」

アダム「・・・えっ・・・と?」

エルデ「一緒に食べてやるって言ってんのよ!奴隷仲間同士ね!!」

アダム「・・・あはは。それは、光栄だな。」

そこには今まで見たことがない子供らしい笑顔を浮かべて、嬉しそうにはにかむ少年がいて。
この時あたしは、この子を“主人”と認めたんだ。

▼5年後―。(2072年)

外が騒がしい。
窓際で銃を抱えて仮眠を取っていたあたしは屋敷の異変に気付いて、目を覚ます。

エルデ(19歳)「・・・? 敵襲か?」

今までも幾度となくあったんだ。
この南地は一言でいうと“弱肉強食”の世界で、ブレイズの領地を狙う者は多い。

アダム(12歳)「エル・・・!」

程なくしてあたしの主人、“アダム・ブレイズ”が慌てた様子で部屋に駆け込んできたものだから、今回の事の異常さに思わず気を引き締める。珍しいのだ。彼は強い。屋敷への敵襲など、だいたいはあたしが出て行く頃には終わってしまっている、というのがこれまでの流れだ。

エルデ「・・・え?もしかして劣勢?何事?」

アダム「エル、よく聞いて。詳しいことを説明している時間はないんだ。
けど・・・、今までありがとう。君は僕の、“最高の友人”だった。
さぁ、“逃げて”。
これが、僕からの・・・最初で最後の、君への“命令”だ。」

混乱するあたしの首へ彼が魔力を込めると、途端に“首輪”が外れて、そして床へと落ちて壊れてしまった。

エルデ「・・・・・・は?」

この時をどれだけ心待ちにしたか。これさえ外れれば森へ帰れる。
何年もずっと夢見て、けれど諦めていた“それ”は突如現実となって。
受け入れられるわけがなかった。

エルデ「何やってんのよ、あんた・・・!? こんなことしたらあんたもタダじゃ済まな・・・」

背筋が凍った。目の前の少年のその瞳は、まさに“主人”のそれで。
圧倒的な威圧感に、あたしは言葉を失った。

アダム「さよなら、エル。さぁ、行って。」

あたしはそのまま窓から逃げ出して、数日後になって全ての状況を把握した。
“ブレイズ家の裏切り者”、領主である彼の父親が惨殺されたというそのニュースは南地全土に駆け巡り、アダム・ブレイズはたちまち指名手配犯としてその名を轟かせた。

エルデ「あいつ・・・、カインに・・・はめられたんだ・・・。」

元々何もかもが秀でていた異母弟を、カイン・ブレイズは嫌っていた。
アダムはそれでもずっと、彼の助けになろうとしていたけれど、その想いは届かなかった・・・ということなんだろう。

アダム「エル、僕はね、父上の力になりたいんだ。
母上と継母様かあさまの確執は悲惨なものだったけど、
それでも父上は、僕達を見捨てなかったから。
継母様かあさまは無理かもしれないけど、兄上とはきっとわかりあえると思うんだ。」

「小さい時は優しかったんだよ?」と懐かしそうに笑う彼の顔が思い出されて・・・

エルデ「馬鹿じゃないの、ほんと・・・。殺しておけば・・・よかったんだよ・・・。」

おそらく、アダムの実力でもブレイズ家の力を総動員されれば、逃げ切れないだろう。
“主人”の死、という後味の悪い現実を前に、あたしは再び手に入れた“自由”を素直に喜べなくなってしまった。

▼エルデEP6-3 (2075年):『セントラルへ:主人との再会』
3年後―。

あれからというもの、結局あたしは南地に残って、消息不明となったアダム・ブレイズの情報を探し続けていた。

エルデ「何なのよ、消息不明って・・・!生きてんのか死んでんのか、はっきりしなさいよ・・・!」

今日も、とある情報を辿ってアダムが隠れているかもしれないという屋敷に侵入してみたのだが、数十回目の見事な空振りを食らい、ただただしょーもない奴隷商の一団が悪巧みをしているだけの現場を得意の狙撃で壊滅させて、人質の女の子を解放する“正義”の暗殺者になってしまっただけだった。
もう諦めた方がいいのかな・・・と迷っていた矢先、その報はあたしに衝撃をもたらした。

「東地平定!セントラルの英雄、その名は“アダム”・・・!」

・・・端末に飛び込んできたニュース速報にあたしの目は釘付けになった。

エルデ「・・・ア・・・ダム・・・??・・・は?セントラル・・・?!」

いや、よくある名前だ。別人に違いない。

エルデ「いやぁ、まさか、そんなわけ・・・アハハ・・・。」

自身の言葉とは裏腹に、あたしはセントラルへと一直線に駆けだし始めていた。

▼ほどなくしてセントラル。

ヌル「いやぁ、今日も酒がうまい・・・!」

あの忌々しい東地をアダムが平定してからというもの、このセントラルにはたくさんの“贈り物”が届くようになっていた。各国、蛇の“奴隷”にはなりたくない、ということだろう。

ヌル「ひっどいよねぇ。私はこんなにも平和を愛しているというのにさぁ・・・?」

彼女が一人で晩餐を楽しんでいたその矢先、“それ”は蛇の頭を静かに貫いた。
一瞬の痛みの後で彼女はその場に昏倒し、そこからは血の海が広がっていく。

エルデ「・・・ふん。なーにが“蛇”よ。ただの酒カスじゃないの・・・。」

セントラル本部へと外の樹づたいに窓から忍び込んだ小柄な暗殺者は、足音もなく侵入を果たすと、そのまま重厚な装飾のついたドアへと向かっていく。

エルデ「さぁて、探しますか。救国の英雄とやらを。」

ヌル「・・・へぇ? アダムをお探しかい・・・?この蛇を脇役扱いとは、つれないねぇ。」

エルデ「・・・は!?」

たしかに頭を撃ち抜いた・・・はずだ。うしろでゆっくりと起き上がる“蛇”の気配に、暗殺者はというと臨戦態勢を取って振り返る。

ヌル「あーあー、また血まみれだ。これ、この前買ったばかりのお気に入りなんだがねぇ。」

のんきに洋服の心配をする“それ”に、彼女は落ち着いた様子で銃を構え直して、そして再び撃ち抜いた。

エルデ「これだから魔導師は嫌いなのよ・・。油断ならないわほんと。
どういう絡繰りよ。おかげで無駄に弾食ったじゃない。」

至近距離での心臓への三連銃撃だ。今度こそ致命傷だろう。
だが・・・

ヌル「わかったって。ちょっと待って。ほんと、痛いってば。」

エルデ「・・・!? はぁぁぁ!? 意味わかんないんですけどぉぉ・・・!?」

さすがに意味がわからない。殺傷力の高い大型狙撃銃の弾をありったけ正確に心臓へとぶちこまれた後も尚、へらへらと笑ってこちらへ向かってくる“それ”を前にして、小柄な暗殺者は腰を抜かしてへたり込む。

ヌル「あ、やっと弾切れ・・・? いやぁ、お姉さん、すごいねぇ。全然気付かなかったよ。」

エルデ「ば・・・化け物だ・・・。化け物がいる・・・。
ありえない・・・始の女神よ・・・エデンの民はやはり・・・悪魔の末裔です・・・。」

ヌル「いや、たしかにエデンはクソなんだけど、一緒にしないでくれないかなぁ・・・?」

アダム「今度は何事ですか・・・!?・・・って・・・エル・・・?」

エルデ「えぇ・・・? あぁ、これ、夢かぁ・・・。アダム、今そっちに逝くよぉ・・・。」

アダム「ちょっ・・・大丈夫・・・?!エルってば・・・!」

特に上官を心配する様子すらなく、むしろ微妙に怒った様子で騒動の渦中の一室へと駆け込んできた見知った少年に名を呼ばれ、涙目でへたり込んでいた暗殺者、エルデ・シンはそのまま気を失った。

この後、目を覚ましたあたしは再び相見えた蛇とまた一悶着起こして、セントラルの英雄となった立派な“主人”を困らせることになるのだけれど。それはまた別の話。

▼エルデEP6-4(2076年):『セントラル軍人時代①:南国フォーマルハウト平定譚』

ヌル「ねぇ、エルデ、これ見た?
父殺しの英雄、アダム・ブレイズだって。カイン君、必死だねぇ。」

エルデ「・・・てめぇが犯人だろうがよ。」

ヌル「ははは、南地はね、昔からこうなんだよ。血で血を洗うのはお家芸ってね。」

エルデ「・・・へぇ? あんた、南地にも詳しいの?さすがロリババアなだけある。」

ヌル「ちょっと失礼じゃないかなぁ・・・?!こんなに可愛いのに・・・。」

エルデ「うるさい、化け物。まぁ、いいわ。
あたしを呼んだってことはつまりそういうことでしょ?
今回だけは協力してあげるわ。あいつには借りがあるしね。」

ヌル「話が速くて助かるよ。救国の英雄殿はどうにも南地平定には消極的でね。
おかげであちらさまはこのとおり、やりたい放題さ。
ちょっと困ってるんだよねぇ。彼はうちの大事な広告塔なんだからさぁ。」

エルデ「・・・カインとは、やりあいたくないんでしょ。」

ヌル「ふーん・・・?
では、この蛇が“兄弟感動の再会の場”をセッティングするとしようではないか♪
いやぁ、楽しみだなぁ。どんな顔するかなぁ、アダム・・・♪」

エルデ「あんた、ほんと性格悪いわよね・・・。」

※この後、ヌルとエルデの陰湿な策略により、南地は平定され、
カイン・ブレイズは領主殺害の真犯人としてセントラルの牢獄に収監されることになる。
アダムは北地へ旅立つまでの間、度々彼への面会に出向いている。

▼エルデEP6-5(2085年):『セントラル軍人時代②:エルデ・シン大佐』

(エルデ32/アダム25/北地でイヴ誕生時/アベル13歳/巻き込まれオッド年齢不明)

エルデ「あなたたちが蛇・・・じゃなくて、ヌル将軍の推薦の子たち、かしら?」

アベル「はい、そうであります!!エルデ・シン大佐・・!
あの救国の英雄の汚名を晴らした南地平定の立役者と同じ部隊だなんて・・・!
俺、入隊してよかったぁ~!お目にかかれて光栄です!」

オッド「どうして、僕まで・・・・・・」

エルデ「・・・・・・子供じゃないの・・・。あの野郎、面倒ごとばっか押しつけやがって・・・。」

アベル&オッド

エルデ「え、あぁ、いや、何でもない・・・!ほら、仕事教えるから、こっち来て。
今日からびしばししごくわよー!」

※北地にアダムとともに行きたかったのに
ヌルから許可が下りなかった故の、
腐りきったエルデの姿である。
なんだかんだ、いい上官になっている気がした。

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※ストーリーはキャラクター順に繋がっています。